豊富なコリンエステル高めの血圧改善に効果

高知なす「機能性表示食品」に

JAグループ高知

高知新聞2021年6月27日(日)掲載

地域活性化所得増大生産拡大
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生産量日本一を誇る、高知県産ナス。このほど、JAグループ高知で生産・出荷するハウス促成栽培の冬春ナス「高知なす」に、高めの血圧(拡張期血圧)を改善する効果があるコリンエステルが豊富に含まれていることが実証され、生鮮ナスとして初めて「機能性表示」が認められた。「栄養価が低い」というイメージを持たれがちだったナスだが、今後は「機能性表示食品」として需要拡大・売り上げ増に期待が高まっている。

 生鮮ナス初

全国の市場に出荷されるナスは、出荷時期によって冬春ナスと夏秋ナスに分けられる。冬春ナスは本県や熊本県、福岡県など温暖な地域でハウス促成栽培されるナスで、夏秋ナスは群馬県や栃木県、茨城県などで栽培される露地物のナスだ。

高知県のナス栽培は、安芸市、安芸郡芸西村、安田町を中心に県内各地で栽培されているハウス促成栽培の冬春ナスで、8月ごろに定植して9月から翌年6月ごろまで収穫する。その出荷量は3万6千トンで全国1位、全国の約33%を占めている(令和2年度農林水産省作物統計調査)。JAグループ高知では、「高知なす」の商品名で出荷している。

この「高知なす」には、ナス由来のコリンエステルが豊富に含まれていることから、血圧改善効果が認められ、生鮮ナスとして初めて機能性表示が認められた。

この研究は、信州大学の中村浩蔵准教授が「体に良い影響を及ぼす食品」について調べていたところ、血圧を下げる効果があるコリンエステルを発見したことに始まる。さらに、ナスに特に多く含まれることを突き止め、日本中のナスを取り寄せて調べてみたところ、本県産の冬春ナスに最も多い品種が含まれることが分かった。

露地物の夏秋ナスは成長が早いが、冬春ナスは寒い時季にハウスの中でゆっくりと成長する。その過程で、多くのコリンエステルが蓄積されるのだという。中村准教授の研究によると、その量はピーマンやトマトなど他の栽培作物に比べ、約3千倍に及ぶという。

 

機能性表示の届け出が完了し、新パッケージでの販売が始まっている「高知なす」

 

 1日2本で

「機能性表示食品」とは、科学的根拠に基づき特定の保健の目的が期待できる(健康の維持および増進に役立つ)機能性を表示した食品。販売前に消費者庁への届け出が必要で、疾病の診断や治療、予防を目的としたものではない。

ナスの血圧改善機能を健康長寿社会の実現に生かすべく、2017年に信州大学を研究代表機関とする農研機構生研支援センターの「ナス高機能化プロジェクト」が発足。高知県農業技術センター、県内のナス生産者が参加し、JA高知県、高知県安芸農業振興センターも協力機関となった。

臨床試験でナスの血圧改善効果を実証して論文を発表。20年9月、機能性表示食品として消費者庁への届け出が完了した。「高知なす」は、同時に開発されたサプリメントやナスの漬物とともに機能性表示食品となり、今年の3月から「高めの血圧(拡張期血圧)が気になる方へ」と明記したパッケージでの販売が始まっている。

効果を得るためには、1日に2.3ミリグラムのコリンエステル摂取が必要となるが、「高知なすは1日2本食べることでそれを満たすことができる」(中村准教授)。これまで、栄養面では特筆するものがなかったナスの、新たな一面が見えてきた。

コリンエステルは水にさらすと流出してしまうが、熱には強いため、丸ごとラップにくるんでレンジで加熱するのが簡単で有効な調理法。1本につき1分半を目安に加熱すれば、そのまま料理に使え、冷凍もできるという。

 

 

 需要拡大に期待

安芸郡安田町で40年以上ナス作りを続けてきたJA高知県県域高知なす部会長の清岡克弘さん(62)は、「機能性表示食品として認められている『大豆もやし』(大豆イソフラボン含有)や『三ケ日みかん』(GABA含有)に並ぶワンランク上のナスになった」と喜ぶ。

「高知なす」は、農家によって栽培する品種がまちまちだが、「竜馬」「土佐鷹」「慎太郎」「はやぶさ」の4品種いずれも有効な量のコリンエステルが含まれていることが実証された。「研究には大量のサンプル提供が必要だが、日本一の産地だからこそできた」と話す。

「高知なす」の栽培農家は、先進的な環境保全型農業にいち早く取り組み、協力し、切磋琢磨(せっさたくま)し合って「選ばれる産地」を築いてきた。長年、妥協せずいいものを作ってきたことが日本一につながったという自負がある。

さらに、栽培について語り、実際にナス料理を食べてもらう試食販売を大切にしてきた。コロナ禍の前は、県内外で年間300回の試食販売を行っていたという。試食販売で活躍するのが、農家の女性たち。試食を差し出しながら、明るく絶妙なトークで「高知なす」をPRする。

今般、明らかになった機能性についても「パッケージに書いているからそれでいいってことじゃない。やっぱり、一人一人のお客さまに、丁寧に伝えていくことが大事」と、試食販売を復活できる日を心待ちにしている。

清岡さんは、「コリンエステルを含むナス粉末には、和三盆糖のような甘さがあり、今後、お菓子などさまざまな商品の開発が期待される」と話す。加工品の開発が進めば、規格外の「高知なす」の有効活用も期待される。

日本の高血圧患者は推定で約4千万人ともいわれている。「高知なす」は毎日の食事で健康を維持するための一助となる、身近な食材として注目を集めそうだ。

 

「ワンランク上のナスになった」と喜ぶ県域高知なす部会長の清岡克弘さん(安芸郡安田町唐浜)