幼い頃から、祖父の養豚の仕事を見てきた山中翔太さん(29)。大学生の時に事業承継の大切さを学び、「最近体がしんどうなったき、もう辞めようか」と漏らし始めた祖父の豚舎を引き継ぐことを決めた。
祖父は、高知県畜産試験場と連携して「四万十ポーク米豚」の試験飼育を始めた最初の養豚業者だった。小規模だからこその挑戦で、ブランド豚の開発を支えてきた。「おいしい」と言われる豚肉を目指して奮闘してきた祖父の養豚を、「細々でいいからずっと続けたい。絶対に辞めない、つぶさないと決めています」と話す。
大学卒業後、一般企業で働きながらたびたび祖父の仕事を手伝ってきた。すべてを譲り受け事業主となるタイミングで、四万十町に帰ってきた。現在は家族で養豚業を切り盛りしている。
飼育する母豚は約130頭。1回に10~13頭ほど生まれる子豚を育て上げ、180日前後で出荷する。日々の仕事は給餌と掃除が大半を占め、出荷、種付け、お産、去勢などの養豚サイクルを回し、年間約2200頭を出荷する。豚は病気に弱く家畜伝染病には万全の注意が必要で、人間の体調管理も欠かせない。“365日休みなし”の生き物相手の仕事は「とにかく体力が勝負です」と笑顔で語った。