新規就農者インタビュー

新規就農者インタビュー

肥育農家喜ぶ子牛を

土佐町

式地優貴さん (28)

就農 4年目(掲載時)

高知新聞「みどりの広場」2020年8月23日掲載

土佐あかうしの繁殖農家に生まれ、台風の日も熱がある日も牛舎に通う父の姿を見て育った。ある時期、土佐あかうしの価格が下がり「家の牛がどんどん黒に変わっていった」と振り返る。

東京農業大学に進み、全国から集まった和牛農家仲間と切磋琢磨(せっさたくま)するうちに、「黒毛はどこにでもおる。どうしても土佐あかうしを育てたい」という思いが強くなっていった。卒業後、「川井畜産」で2年間修業し、25歳で父親から経営を引き継ぎ独立。少しずつ規模を拡大し、現在は母子合わせて約80頭を飼育する。牛のペースで回る毎日だが、「来世でもやりたい」というほどこの仕事が好きなのだそうだ。

血統の相性を考えた種付けから出産まではおおよそ285日。分娩(ぶんべん)が近づくと毎晩様子を見に行き、お産が始まると一晩中寄り添って手助けする。時には流産や早産、死産で胸が痛むこともある。だが、「とにかく観察」と休みがなくてもまったく苦にならない。

子牛は7、8カ月齢で出荷するが、それまでの育て方がその後の餌の食べ方や肉付きに影響するため、“肉になるまで”が仕事だと考えている。「枝肉を見たら分かる。病気をした子牛は『やっぱり…』という結果になってしまう」と式地さん。「肥育農家さんが喜ぶ子牛を育てたい」と、技術向上に向けて貪欲に学び続けている。