今年1月に発足したJA高知県は、4月に「JAファーマーズマーケットとさのさと」の営業をスタート。さらに9月20日、同敷地内に「アグリコレット」がオープンし、県全体の食を網羅する複合施設が完成した。県民の注目を集めるJA高知県の取り組みについて聞いた。
移転し拡大
新しい商業施設の進出が相次ぎ、にぎわいが増す「御座・卸団地エリア」。中でも、JA高知県の子会社である株式会社とさのさとが運営する「JAファーマーズマーケットとさのさと」、新たにオープンした「アグリコレット」、そして「サニーマートとさのさと御座店」が並ぶ一角には、買い物をする老若男女の姿が絶えない。
「とさのさと」「アグリコレット」は、JAグループ高知が進める自己改革の一環として、南川添にあった直販所「とさのさと」を移転・拡大した高知県全体の食と地域、自然を伝える拠点となる複合施設だ。
取り組みの原点には、加速する人口減とそれによる地域の衰退に、県域JAとして何をするかという課題意識があった。本県の人口は年間約8千人減少しているのに対し、高知市近郊は年間約千人減。郡部の過疎化は深刻であり、それはすなわち、高知県の農業が危機的状況にあるということでもある。
ワンストップで
高知の農業を担い、支える郡部の活性化を図るためには、大きな直販所をつくるだけでは不十分だと、「食・地域・自然」をテーマにした食のモールを目指し、合併以前から組織横断的に準備が進められてきた。
「観光客を呼び込む施設ではなく、地元の人が日々の買い物をし、食事をしてもらう施設。便利に、ワンストップで買い物をしていただくためには、サニーマートさんと一緒になって幅広い商品を提供する形が良いと考えました」と株式会社とさのさとの竹中義博社長(59)は話す。
「とさのさと」は、従来の生産者持ち込みに加え集荷式も取り入れ、県内18拠点から新鮮な野菜を集め店頭に並べる。旬の取れたてで安価な産直野菜に加え、土佐あかうし、鮮度抜群の魚介類なども扱い、常時大勢の買い物客でにぎわっている。
竹中社長は、「会社帰りに寄ってくださるお客さまも多く、夕方まで少しでも多く品物をそろえるよう努力したい」と話す。
イベントも開催
先月オープンした「アグリコレット」は、「高知のうまいを再発見」をコンセプトに、地元の食を発信する。地域インフォメーションも併設し、市町村のイベントや観光情報も入手可能だ。
レストランとテークアウトは、高知の食材を生かした料理を提供するテナントを誘致。セレクトショップには、市町村発の「おすすめ品」を紹介する「れんけいブース」や、高知県の6次産業化セミナーで具体的に商品化され農業者が自ら作った加工品を扱う「いっちょういったん」などのコーナーも設置し、県内全市町村から集めた加工品が並ぶ。
約1300点のアイテムが並ぶセレクトショップは、“知らなかった高知”に出合える場所として、多くの人の関心を集めている。
「もちろんお土産にも使っていただけますが、地元の方にも『こんなおいしいものがあるんだ』と知っていただきたい」と竹中社長。高知の食がいかに豊かで、魅力的であるかを店舗全体で発信する。
イベントスペースでは、食を中心とする地域のイベントを開催し、郡部の活性化につなげたい考えだ。すでに、オープン時に「ゆすはらフェア」、10月初旬に「秋季果実展示品評会・即売会」が開催され、多くの人でにぎわった。
通常はテーブルを置いてイートインスペースとして開放しており、客がアグリコレットで購入した商品をその場で食べることができる。また、若い子育て世代にも高知の食への理解を深めてほしいと、キッズスペースを店舗中央に設置し、大人の目が届く所で遊ばせられる環境を整えた。
さらに拡大を
さらに、10月からは、「とさのさと」の野菜を使った料理教室を順次開催している。アグリコレットは旧サニーマート御座店を改築した建物で、人気の高かった「キッチンプラス」をそのまま残しており、JA高知県、サニーマートの双方が料理教室を運営する。
また、西側の一角には、「JA高知県とさのさと支所」を開設した。金融、共済を扱っており「買い物ついでに寄れるので便利」「待ち時間も苦にならない」「土日も開いているから相談に行きやすい」と好評だ。
竹中社長は「売り上げはお客さまからの信頼のバロメーター。たくさんのお客さまに来ていただいて商品をお買い上げいただき、喜んでもらうことが農業の活性化、ひいては地域の活性化につながる」とさらなる拡大を目指している。